表題番号:1995A-147 日付:2002/02/25
研究課題情報量を用いた投資家の期待効用最大化問題に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助手 葛山 康典
研究成果概要
本研究では,証券市場における投資家の意思決定問題を取り扱った。ここで情報量は投資家が直面するリスクを定量化するために用いられる。本研究では,まず市場におけるリスクの構造を経済変数と結びつけながら解析した。ここでは因子分析に基づき,市場モデルを構築した上で,各因子と経済変数との相関を最大にする因子の回転量を与えた。
加えて,投資家が歴史的データに基づいて意思決定を行った場合,すなわちポートフォリオ選択を行った場合について,選択されるポートフォリオがもつ特徴をリスクという視点から整理した。ここでは,ポートフォリオ選択に用いられる分散共分散行列のランクに関して生じる性質を明らかにした。特に,市場において裁定機会を存在せしめるゼロバリアンスポートフォリオの存在条件を,投資家の意思決定における制約条件との関係において吟味した。
その上で,投資家の意思決定問題が,収益率分布の正規性の下で,情報量を基に議論するモデル化を行った。
この情報量に基づく意思決定モデルは,情報量がリスク尺度としての役割を果たしている。また,特に投資家の効用が対数効用関数として表現される場合には,情報量が将来の収益に対して投資家が感じる不効用を表しているものと解釈することができる。
一方,単位リスク当たりの収益という視点から見た場合,投資家が支払うコスト(売買委託手数料)の影響を評価しておくことも重要である。そこで,コストの存在下での投資家の意思決定の変化についても,分析を行った。その結果,ポートフォリオ選択時においてはその影響は必ずしも顕著ではないことが確認された。