表題番号:1995A-141 日付:2002/02/25
研究課題高機能ナノ結晶薄膜成長過程の原子レベル解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 本間 敬之
研究成果概要
機能薄膜分野において注目され始めている“ナノ結晶薄膜”系においては,個々のナノ結晶の性状のみならず,その集合状態というメゾスコピック領域の構造が特性発現を左右することが予想されるが,現状ではこの点はほとんど未解明である。そこで本研究ではナノ結晶集合体の形成機構の原子レベルからの詳細な解析により,集合体形成に影響を与える諸因子の解明,更に集合状態と機能持性の相関性を明らかにし,このような新しい観点からの材料設計に関する基礎的指針を得ることを目的とした。
まず機能特性が極めて構造敏感なことが従来の検討により確認されている無電解Co系磁性薄膜を対象に,集合体形成に影響を与える諸因子について系統的に検討した。その結果錯化剤として添加されている
NH3濃度により磁気特性が大きく変化することが明らかとなった。その起源について透過電子顕微鏡等により微細構造解析を行った結果,遊離NH3が結晶成長サイトに吸着し微結晶の成長が阻害されるためであることが明らかとなった。また個々のナノ微結晶内に極微相分離状態が生じ,これが磁気特性発現に大きく影響していることが示唆された。
次に,微粒子集合体形成過程を定量的に評価するため,原子間力顕微鏡を用いた解析を行った。析出基板表面の触媒化状態(すなわち微結晶集合体形成のための“核”の状態)を種々変化させた系における成長過程のScaling解析結果から,各条件における微結晶集合体形成モードを定量的に評価する手法を確立した。
更に原子レベルでの集合体形成過程を検討するため計算機シミュレーションを行った。既存のRDSD(RandomDeposition with Surface Diffusion)モデルに触媒活性度をポテンシャル関数として与えたモデルを構築し,シミュレーションを行った結果,実験により観察されたような表面微細形態変化を良く再現することが確認され,ナノ粒子集合体形成を左右する“触媒活性度”というパラメータを定量的に解析する端緒が得られた。