表題番号:1995A-140 日付:2002/02/25
研究課題ドイツ後期中世文芸における死生観
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 専任講師 石井 道子
研究成果概要
本研究はドイツ中世後期の詩人オズヴァルト・フォン・ヴォルケンシュタイン(1376/78~1445)を中心に扱っている。チロルの貴族オズヴァルトは宮廷文芸の最後の担い手で,伝統を継承し,新しい展開をみせたが,この後は都市文化の時代となり,彼の後継者と言える宮廷詩人はいない。
オズヴァルトの宗教的な作品と中世盛期の詩人の作品を比較すると,次のような特徴を明らかにすることができる。
この時代は安定した教皇権の絶頂期にあり,教会のあり方,聖職者に対する批判精神は見られない。
それに対し,フスの改革運動には反対の立場をとっており,フス派批判をおこなっている。
また,罪の告白および死と地獄の不安が重要なテーマになっている。これらの詩は,信仰に希望を求める言葉で終わっている。この告白や不安感は,細かく具体的な描写で歌われ,また死への畏れは個人的な「自分の死」が対象となり,抽象的な常套句を中心とした中世盛期の詩とはかなり異なっている。特に,地獄の描写におけるイメージの拡張が特徴的である。