表題番号:1995A-136 日付:2002/02/25
研究課題制振建物の大地震時挙動に関する振動台実験
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 曽田 五月也
研究成果概要
申請者は,本年度,粘弾性体ダンバーを利用する制振構造に関して,それを更に大地震を対象とする構造法としての拡張を念頭にして,その効果・安全性を実証することを目的として実験的な研究を実施した。実験では,ダンパーを各層に均等に配置した3層鋼製フレームを用い,柱はその変形が弾塑性範囲に及ぶため必要に応じて交換できるようにしてある。また,各層の柱の断面寸法を変えることにより損傷が1層に集中するタイプと2層に集中するタイプを用意した。ダンパーの取付方法としては,フレームの変形に対してダンパーの容量が大きくなるものと小さくなるものを用意した。フレームの1次固有周期は,損傷が1層に集中するタイプで0.49秒,2層に集中するタイプで0.43秒で,1次減衰定数は,損傷が1層に集中するタイプで11.6%(ダンパー容量大),2.2%(ダンパー容量小)となり,2層に集中するタイプで9.5%(ダンパー容量大),1.8%(ダンパー容量小)となった。入力地震波は,十勝沖地震NS成分,兵庫県南部地震NS成分のそれぞれについて柱の変形が弾性範囲になるものと弾塑性範囲になるものを用いた。柱の変形が弾性範囲になるような地震波を用いた振動台実験では,ダンパーが大きな制振効果を発揮することが確認できた。柱の変形が弾塑性範囲になるような場合では,ダンパーの容量が大きな場合では効果的であるが,ダンパーの容量の小さなものでははっきりとした効果は見られなかった。最後に,3層鋼製フレームを3質点系せん断モデルに,粘弾性体ダンパーを3要素モデルに置き換えて解析的な検討も行った。柱の変形が弾性範囲になる振動に対してだけでなく,弾塑性範囲になる振動に対しても粘弾性体ダンパーの3要素モデルによる適合性が確認できた。以上より,柱の変形が弾塑性範囲に及ぶような大地震に対しても粘弾性体ダンパーの制振効果と,3要素モデルにより実ダンパーの挙動を正確に予測できることを確認した。