表題番号:1995A-135 日付:2002/02/25
研究課題光プローブを用いた有機修飾セラミックスのミクロ環境の検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 菅原 義之
研究成果概要
ゾルゲル法において,4官能性のアルコキシシランと共に,Si-C結合を持つオルガノアルコキシシランを出発物質として用いることにより,有機・無機複合材料を合成することができる。本研究では,テトラエトキシシランSi(OEt)4(TEOS) とSi-C結合を持つメチルトリエトキシシランMeSi(OEt)3(MTES) が共存する系について,MTES/(TEOS+MTES) の比を様々に変え,得られるゲルの構造に関する検討を行った。分子レベルでの構造に関する情報を得る方法として,1)励起二量体を生成する,2)分子周囲の極性に依存してその蛍光挙動が敏感に変化する,などの蛍光特性を有するピレンを光プローブとして用い,MTES含量の増加に伴う構造の変化を追った。
反応は,TEOSのみの系で亀裂のないキセロゲルを合成した報告例に基づき,TEOS-MTES-EtOH-HCONH2-H2O-HNO3系で行った。TEOS,MTES,EtOH,HCONH2を混合して,HNO3とH2Oを滴下し10分間攪拌した後,密閉して60℃に保ち,ゲル化熟成後,溶媒を取り除いて引き続き60℃で乾燥させた。ピレンはあらかじめエタノールに溶解させて加え,キセロゲルについて蛍光スペクトルを測定した。
MTES/(TEOS+MTES) が0から0.5までの試料については透明でひび割れのないキセロゲルを得ることができたが,MTES/(TEOS+MTES) が0.5以上になるとゲルは白濁した。キセロゲルの発光スペクトルを測定したところ,励起二量体による蛍光はほとんどみられず,ピレンモノマーに起因する5本の鋭いピークのみがみられた。このことから,ゲル中でピレン分子は十分に分散しているものと思われる。MTES含量の増加に伴ってI1/I3が減少しており,I1/I3の減少はピレン分子周囲の極性の減少を示すことから,ゲル骨格中にメチル基が増加することにより,分子レベルでの極性が減少していることが分かった。