表題番号:1995A-132 日付:2002/02/25
研究課題超臨界熱水溶液中における亜鉛クロロ錯体の安定性に関する実験
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 内田 悦生
研究成果概要
遷移金属の超臨界熱水溶液中における溶存状態を調べるためにCaWO4とMeWO4(Me:遷移金属)の2相と共存する塩化物水溶液のCa/(Ca+Me) 比に及ぼすNaClの影響に関する実験を既にニッケル,コバルト,鉄,マンガンに対して行なって来た。同様の実験を亜鉛に対して行った結果,CaWO4とZnWO4の2相と共存する塩化物水溶液のCa/(Ca+Zn) 比は小さくCaWO4-
ZnWO4系はNaClの影響を正確に調べるには適切な系ではないことが分かった。そこで亜鉛の超臨界熱水溶液中における挙動を調べるには他の適切な実験系を探す必要があった。その候補としてCaTiO3-ZnTiO3系を用いて予察的な実験を行ったところ塩化物水溶液のCa/(Ca+Zn) 比は適切な値をとることが分かった。
そこでこの系を用いてCaTiO3とZnTiO3の2相と共存する2N塩化物水溶液との間におけるイオン交換平衡に及ぼすNaClの影響に関する実験を500~700℃,1kbおよび600℃,0.5kbにおいて行った。実験にはテストチューブ型高圧反応容器を用いた。また,出発物質には酸化物の混合物またはこれらを高温・高圧処理して得られた合成物を用いた。実験の結果,いずれの条件下においても上記2相と共存する2N塩化物水溶液のCa/(Ca+Zn) 比は著しく減少し,これはZnCl2aqがNaClaqの解離によって生成されるCl-aqと配位結合しZnCl3-aqを生成することによると考えられる。従来求められているNaClaqとCaCl2aqの解離定数を用いて実験結果を熱力学的に解析した結果,ZnCl3-aqの生成定数の対数値は,1kbでは500,600,700℃の各温度でそれぞれ1.1,2.1,2.7,0.5kbでは600℃において2.6であり,亜鉛のトリクロロ錯体は高温・低圧ほど生成されやすいことが分かった。このことは遷移金属鉱床の生成環境を考える上で重要な知見である。