表題番号:1995A-123 日付:2002/02/25
研究課題コンクリートの耐久性の評価方法に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 関 博
研究成果概要
橋梁,道路などの基幹施設であるコンクリート構造物は極めて重要な社会資本であり,今後共にその機能を十分に保持するためには,所要の構造物としての安全性等を保持することが不可欠である。しかし,コンクリートの経年による品質の変化(低下)は避け難いものであり,所要の年限内で構造物を有効に活用するためには,劣化の程度を予測すること,ないし,劣化に対する高い抵抗性(耐久性)を保持するコンクリートを造る必要がある。しかし,現在のところ,劣化を予測するための評価方法は極めて少なく,高い耐久性を有するコンクリートの判断は困難となっている。
コンクリートの劣化は,コンクリート中に気体,液体などが浸透することが基本的な原因であることから物質のコンクリートへの移動に着目した試験法を検討し,適切な耐久性の評価方法を提示することが大切である。
今回は,コンクリート中のイオン移動を主眼として,円形の供試体を製作し,供試体両面のセルに溶液を充填させ,溶液にアノード電極およびカソード電極を通して電荷を加えて,モルタル中を流れるイオン量などに関して実験的に検討を加えた。
本実験より,ほぼ以下の結論が得られた。
すなわち,
1.カソード側セルに溶出してくるアルカリイオンおよびアノード側セルに溶出してくる陰イオンは,ほぼ一定となり,定常状態と見なすことができる
2.イオンの移動量は,電流密度や通電期間によらず積算電流密度によりほぼ定まる。
3.イオンの移動量は,定常状態の場合は,ネルンスト・プランクの式を用いることによって推定することが可能である。
4.コンクリート中のイオンの担う電流の全電流に対する割合は3~15%と非常に小さな値であった。これは,コンクリート中のNa+,K+,Cl-,OH-の存在量が少ないことによるためと思われる。