表題番号:1995A-120 日付:2002/02/25
研究課題マイクロ波プラズマCVDにより作製したSiN膜への酸素混入について
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 加藤 勇
研究成果概要
当研究室ではマイクロ波プラズマCVD装置を用いて,SiN膜を作製し膜質評価を行い堆積機構について検討を進めてきている。その結果,窒素ガスとシランガス以外の元素である酸素が膜中に含まれていることが分かってきた。本研究では,SiN膜中に含まれる不純物である酸素に注目し,混入酸素の少ないより良質なSiN膜を作製することを目的とした。
酸素の混入は成膜直後のIRの測定結果から,成膜時にも既に混入していると考えられる。この原因を以下の手順により明らかにした。まず堆積室内の残留気体の質量分析の結果から,酸素を含む分子は,OH+,H2O+,CO2+であり,そのうち比較的大きいマススペクトル強度は,OH+,H2O+であることが分かった。また,窒素プラズマを生成しても,マススペクトル分布の強度は変化していないので,窒素プラズマによる堆積室内壁や石英製の放電管のスパッタリングは起きていないと考えられる。さらに,堆積室内壁のベーキングの有無,真空引き時間の変化により装置内壁からのガスの放出量を変化させた場合の真空引き停止後の堆積室内のガス圧の経時変化を測定した。その結果,通常行っていた4時間程度の排気状態では堆積室内壁からのガス放出量がリーク量より1桁以上大きいことが分かった。以上のことから,膜中への酸素混入の原因は主に装置内壁から放出されたH2Oであると考えられる。
そこで,堆積室内壁のベーキングの有無等により,基礎真空度を変化させ,質量分析を行った結果,基礎真空度が2×10-7Torrの状態では,5×10-5Torrの状態と比較して,OH+,H2O+のマススペクトル強度が1/50程度まで減少することを明らかにした。同様な方法により基礎真空度を変化させて,膜作製を行った結果,基礎真空度を高くすると膜中の酸素は減少しており,基礎真空度を5×10-5から2×10-7Torrと変化させると,膜中に含まれる酸素を27から15at.%まで減少できた。今後は,窒素ガス流量増加,あるいは窒素水素混合ガスを用いるなどして,酸素混入のない成膜法について検討して行く予定である。