表題番号:1995A-114 日付:2002/02/25
研究課題産業社会の変容と情報化に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学部 教授 桜井 洋
研究成果概要
1995年度は「産業社会の変容と情報化に関する研究」と題し,情報化現象に関する基礎的な研究を行った。
情報化という現象は,社会システムを流通する情報の単なる量的な増大という事実にとどまらない。それはインターネットに代表されるように,社会システムにおけるコミュニケーションのインフラストラクチャーの変動である。したがって情報化は経済から文化にいたるまでの,社会システムの全体的な変動である。今年度は研究の基礎的作業として合理性の概念を中心としたモダニティの概念の再検討と,情報化の概念の基礎的なレベルでの検討を行った。前者は『早稲田商学』366・367合併号に掲載した「モダニティの同一性と多様性」であり,後者は1996年6月に刊行予定の『ライフスタイルの社会学』に収録された「情報化社会と個人」である。
一般に自己組織システムはその同一性を維持するためには自己の内部に多様性を不断に産出しなければならない。近代の社会システムもまた,その例外ではない。前者の論考は,合理主義という近代社会の中心的な価値を焦点として,近代の社会システムの同一性と多様性の問題を考察したものである。また後者の論考は,ライフスタイルという概念を焦点として,近代産業社会から情報化社会への変動に際しての,個人の概念の変動を考察したものである。個人の概念は,それぞれの社会,それぞれの時代の意味のシステムによって構築される意味である。近代社会は社会システムの基礎としてこの個人の概念を採用し,それと組織・市場の概念を密接に関係付けた。それに対してライフスタイルの概念は,情報化社会における新たな個人の意味を示すものである。なお,来年度は以上の考察を基礎として,特に文化的領域における情報と意味の概念に関する研究を行いたいと考える。