表題番号:1995A-113 日付:2002/02/25
研究課題ビジネスと政府の関係について
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学部 教授 厚東 偉介
研究成果概要
今回の調査ではアメリカにおけるビジネスに対する政府や議会の対応をケースにして,日本の持ち株会社解禁への最近の動きとその問題点について検討を行った。
アメリカのケースを見る。19世紀末からの第一次合併ブームの過程で連邦政府はシャーマン法を成立させた。
その後財務テクニックのコントロールのため反トラスト法を強化し,クレイトン法と連邦取引委員会法を定めた。
1920-29年の第二次合併ブームは約1万社の買収・合併を誘発した。1929年に始まる大恐慌の根源は州会社法の不備にあるとされ,『企業統治』に関する法的制度の補強が説かれた。1933年の証取法,34年の証券取引所法の連邦法が制定された。33年のグラス・スティーガル法など現代アメリカの基本的金融制度がこの時期に制定されている。
1960年代のアメリカにおける環境問題・失業・都市開発・教育などへの企業の協力や70年代以降の人種差別問題やマイノリティグループの公平な処遇をはじめ消費者問題など,多くの社会問題への企業の取組の監視のため『コーポレート・ガバナンス』が意識された。
70年代以降,M&Aブームで,“株主権”が強調された。株主権はアメリカの資本市場における年金基金などの機関所有の増加も原因の一つである。70-80年代の“財テク”型M&Aは企業統治問題を強く意識させる。この点は現代日本の状況とオーヴァーラップする。
アメリカのケースを調査してみると,一般に言われるほど株主権は無制限ではない。85年のユノキャル社の訴訟の『経営判断の原則』では株主以外の利害関係者への影響が考慮されるとされた。法のレベルでこの判断がなされていることも調査の過程で明らかになった。
『企業統治システム』は利害関係の調整を不可欠なものにする。ビジネスは利害調整の見地から,政府・議会の関与が必要なことが明らかにされた。日本における持ち株会社解禁への動きもこの観点から見るべきで,この方向で対処すべきことが導き出された。