表題番号:1995A-104 日付:2002/02/25
研究課題ニュー・ケインジアンのマクロ経済学-賃金・価格の硬直性とマクロ経済効果-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学部 教授 嶋村 絋輝
研究成果概要
先に提出した研究計画書に従い,ニュー・ケインジアンのマクロ経済学について,賃金・価格の硬直性とそのマクロ経済効果を中心に研究を進めた。とりわけ,「効率賃金理論」を核にして,賃金・価格の硬直性にミクロ理論的な基礎を与えるとともに,雇用や生産はどのように決定され,変動するのかを考察した。
まず,労働者の生産性は企業の支払う実質賃金の増加関数である,という効率賃金理論の基本的主張を正当化する理由を整理した。そして,効率賃金の基本モデルとそのインプリケーションを示した。これより,賃金の硬直性と非自発的失業の併存現象を,企業の最適行動の結果として解明できた。
次に,効率賃金に独占的競争を加味したニュー・ケインジアン・モデルを構築して,企業の最適行動を分析した。実質賃金は効率賃金の水準で一定に維持されるが,雇用,生産および財の価格は,短期的には,貨幣供給(ないしは総需要)が減少するといずれも低下する。しかし,均衡では「貨幣の中立性」が成り立つことを明らかにした。
さらに,効率賃金は水準は景気の状況に影響される可能性を考慮に入れて,効率賃金モデルの拡充を図った。
効率賃金は失業率の減少関数として表せ,均衡において,非自発的失業が存在するが,実質賃金は下がらずに硬直的になることを示した。
最後に,実質賃金は効率賃金の水準で硬直的であると同時に,価格もメニュー・コストの存在やマークアップ価格付けにより現行の水準で硬直的な状況のもとでは,総需要の変動は経済にどのような効果を及ぼすかを,財市場と労働市場の相互作用に配慮しながら検討した。このとき,企業は労働需要曲線からも乖離することになる点をミクロ理論的に明らかにした。
詳細については,早稲田商学第366・367合併号に発表した論文を参照願いたい。