表題番号:1995A-103 日付:2002/02/25
研究課題リレーションシップ・マーケティング下における広告コミュニケーシュンの本質と構造に関する実証的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学部 教授 亀井 昭宏
研究成果概要
規制緩和の着実な進展,消費者の価値観や生活様式の急速な変化,経済・産業・通信などの分野におけるグローバル化の急進展,等々を含む市場環境の変化に加えて,企業経営における新パラダイムの登場,さらには顧客満足度(CS)などの新しい企業活動成果指標への関心の増大によって,企業のマーケティング活動の展開においても,近年明らかに新しい方向性が鮮明化しつつある。
それは,これまでの収益ないしは市場占拠率追求一辺倒のマーケティング(=取引マーケティング)展開から,企業と顧客との間での相互的な信頼関係の構築を基盤として,企業の提供するブランドやサービスに対する顧客側の最大満足の持続的な確保を実現しようとするマーケティング(=関係性ないしリレーションシッ
プ・マーケティング)への変質の動きなのである。
もちろんそうした動向の背後には,従来のような激烈な販売活動を必要としないマーケティング展開によって,企業収益の効率的で持続的な確保を可能にするという究極的な狙いが潜んでいるとしても,直接的には自社の持つブランド価値の社会的認知の確保,生活の質の一層の高度化を含む消費者の生活充実欲求の充足,等々といった一般に認められた社会的価値と,企業のマーケティング活動との調和性を確保しようとするものである。
そこでは,消費者を単なる企業収益源として見るのではなく,自社の経営展開のパートナー(同志)として視野に入れるマーケティングの展開が必然視され,そのことから双方向的ないし相互的コミュニケーション,付加価値創成型の接触,顧客データベースの構築,個人への訴求,等々といった本質的な要件が浮かび上がってくるのである。これは,マーケティングの新しい方向性として企業実践においてはいまだ必ずしも少数派でしかないか,一部の先進的な企業においてその萌芽を認めることができ,今後大いに注目に値するものであることが確認できたのである。