表題番号:1995A-059 日付:2003/03/13
研究課題環境管理計画の実効性-神奈川県逗子市の試みについて詳細分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 森 元孝
研究成果概要
逗子市が92年7月から施行した「市の良好な都市環境をつくる条例」と,それを十分に機能させていくための科学的根拠を与える環境管理計画について,集中的な資料収集と分析作業を実施した。
上の条例制定とそれを実施するための科学的データの整備という発想は,わが国においては先進的な環境政策であるが,そうした発想が生まれてきた理由は,この町で82年以来,池子米軍住宅建設反対運動が続けられてきたことにあるし,またバブル期の土地の乱開発にもある。この二つの点について,運動の展開と時代の背景を緻密に整理する作業を行なった。
すでに神奈川県には環境影響評価条例が機能してきており,米軍住宅建設に際しても,そのアセスメント手続きが進められたが,その形式性がしばしば問題になった。またバブル期の乱開発に対しても,この条例の欠点として20ヘクタール以下の開発は事実上野放しとなっていたため,適切な環境政策を実施できなかった。それらの欠陥を埋めるために考案されたのが,上の条例である。
さらに,事業者が提出する環境影響評価書案に対して,行政側が,独自の客観的データを根拠にして望めるため,たんなるお願い行政を克服して,科学的な議論のもとで環境への影響評価を行なおうというものでもあり,きわめて斬新なものである。
市全域を50メートル四方のメッシュで区切り,そのメッシュ内の自然環境,社会環境,景観等のデータ・ベースを整備しており,これまでになかった環境に関わるデータベースの例となっている。このデータベースの内容と構成についても分析作業を実施した。
94年の市長選挙において環境保護派が後退したことと,バブル期の乱開発が一段落したことにより,当初の発想と理念が未だ十分な機能しえていないのも事実であるが,研究成果については,96年12月刊行の拙著『逗子の市民運動-池子米軍住宅建設問題と民主主義』(御茶の水書房)第5章を中心にまとめた。