表題番号:1995A-058 日付:2002/02/25
研究課題フォルケ・ド・マルセイユの校訂について
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 助教授 瀬戸 直彦
研究成果概要
1994年度は在外研究の機会にめぐまれ,以前よりてがけていたトルバドゥールの校訂の仕事が多少とも進んだ,すなわち中世の抒情詩人フォルケ・ド・マルセイユ(フォルケット・デ・マルセリャ)のイタリア写本を筆写し,パリではInstitut de Recherchre et d'Histoire de Textesやフランス国立図書館に通って,中世韻文作品の校訂の現状を知ることができた。
95年度には,前年度に得た資料や情報によって,あらたに写本のマイクロフィルムを入手し,また在外研究期間中に学んだイタリアでの,フランス中世抒情詩にかんする研究を整理し,校訂の作業にあらたにとりかかることができた。この作業は現在も続けているが,これまでなされ,また,つぎつぎになされつつある,ほかの研究者による研究の整理をおこない,自分の仕事にあらたな方向づけを与えることを,ひとつの課題とすれば,じっさいに数十存在する写本の校合を続けることはまたおのずから別の課題であるといえる。自分にとっては,この二つの課題は,研究の両輪と考えている。
前者については,パリ第4大学の研究誌に,従来よりわたしの研究対象にしてきたC写本(B.N.F. fondsfrancais 856)の研究とフォルケ・ド・マルセイユの関係をまとめて整理してみた。また,写本校合の過程で判明してきた a写本(フィレンツェ,リッカルディアナ図書館2814とモデナ,エステンセ図書館,Campori,N.8.4; 11, 12, 13に収録されている)の写字生の,原本をしるすにさいしての態度,そしてそれがCの写字生と対照的なことを主題にして,『新村猛先生追悼論文集』(96年末刊行予定)に一文をしるしてみた。
後者については,『大学院文学研究科紀要』に,じっさいの校訂の例として,フォルケの十字軍歌を選び,あわせて校訂の問題点をまとめて,自分なりの校訂の基準(principes d'edition)をしめし,批判をあおぎたいと考えている。