表題番号:1995A-048 日付:2007/03/23
研究課題記憶実験用絵画刺激の基準化に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 西本 武彦
研究成果概要
認知心理学実験に用いられる言語刺激に関しては,カテゴリー基準表あるいは有意味度表などの形で各種の基準データが公表されており,共通の刺激を用いて結果を相互に比較することが可能となっている。一方,絵は例えば同じネコという概念に対しても様々な描き方があり,実験者が意図する概念やイメージとは異なる同義概念や類似イメージが想起されたりする。したがって描画法を統一した上で,命名一致度,イメージ一致度,熟知度,描画の複雑さ等の基準指標について標準化されたデータを得る必要性あるが,極めて基礎的な研究である上に,労力と費用の点から今日まで大規模な標準化は行われて来なかった。
さきに,260個の概念について「記憶実験用Picture刺激の標準化」(早稲田大学心理学年報第14巻,p.55-76)を発表したところ,多方面から資料の請求があり実際に使用されていることが分かった。ただし,この時の標準化は米国のものをベースにしたため,日米の生活習慣や文化の違いから修正を必要とする絵が相当数存在した。概念自体になじみがなかったり,描き方に違和感を抱く例が多く,アメリカ人にとってのユビヌキが,日本人ではゴミバコになったのを始めとして,アイロンダイ,アスパラガス,イトツムギ,クワガタ,スパナなどは命名失敗率が極めて高く(対象を知らない・名前を知らない・名前を思い出せない),命名一致度も低いものがあった。
今回の第2次標準化ではこうしたケースを中心にして,さらに命名一致度が高くても日本人にとってより見慣れた描き方に変えた方が適当と思われるものを加え,計44個について描き直した。これに新たに99個の絵を追加して,総計143個の絵について標準化をおこない刺激セットとしての充実を図った。得られた規準化データは,記憶実験やパターン認識実験の刺激,あるいは神経心理学における言語テスト刺激としての活用が期待される。