表題番号:1995A-046 日付:2014/04/13
研究課題謡曲の文体解析についての基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 竹本 幹夫
研究成果概要
本年度は,主に世阿弥時代成立の作品を中心とする非現行曲を集め,校訂する作業を行った。昨年度の成果である竹本編「能作品全覧」(竹本他監修『能・狂言必携』所収,複数の共同執筆ながら,竹本が全面的に加筆訂正し,実質的にも竹本編)を踏まえ,そこに所収の諸曲の内,成立が室町中期にまで遡るものを選び出し,それらの本文を収集・校訂した。これについては,筧捷彦理工学部教授・吉田順一文学部教授・西本武彦文学部教授らとの特定課題共同研究により,OCRを利用しての翻刻文献の読み取り作業と,法政大学能楽研究所鴻山文庫蔵の上掛り謡本写本のCD-ROM化とをなし得たことが,大きく与かっている。予定の諸曲をすべて校訂し得たわけではないが,現在も引続きその作業を継続しつつある。
成果の第二としては,一昨年度に発見した世阿弥時代の珍曲〈融通鞍馬〉を中心として,同時代の数曲について,論考を発表したことがある。研究成果欄に掲げた論文がそれで,前記特定課題共同研究の成果の一部でもあるので,そちらでも掲げてある。小稿は,室町時代の能を網羅的に調査していた一昨年度に,たまたま廃曲〈融通鞍馬〉の一節に世阿弥の芸談『申楽談儀』に引用される出典不明の文句と同一のものを発見したのを,さらに精査し,世阿弥時代の詞章制作技法の諸問題とあわせて作品論的に考察したものである。
上記の成果を踏まえつつ,今後さらに文体解析の材料となる作品の校訂を重ねていく積りである。