表題番号:1995A-039 日付:2002/03/13
研究課題1573年のELEKCJAVIRITIMとヘンリク条項の成立について
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 井内 敏夫
研究成果概要
本年度は,ヘンリク条項の前史について調査した。国王選挙の機会を利用して,王権に「手綱」を掛けるという前例は,明確な形では,1501年10月にリトヴァ大公アレクサンデルをポーランド王に選出したときに成立したミェルニクの特権に見られる。これは,先王のヤン・オルブラフトの元老院を無視した統治に手を焼いた大貴族たちが,リトヴァの窮状に付け込んで獲得した特権であり,形式的には,中・下級貴族の同意を取り付けてはいるが,元老院の優位を固定化しようとするものであり,その点で,大貴族とシュラフタの妥協の産物であったヘンリク条項と異なっている。以下,ミェルニクの特権の内容を記す。
1) セナトルに対する裁判は,王ではなく,議会開催時に元老院が行う。その名誉,財産,生命に関する問題では,3分の2の多数決による。2) 王への忠誠拒否権。王がセナトルの人身や財産に不当に危害を加えた場合,王老院の採決で,全王国は王への誓約と忠誠から開放される。他の君主のもとに逃亡し,王に対して不正を晴らすこともできる。3)(貴族の)臣民はあらゆる司法問題で,郡裁判所から議会法廷に上訴できる。4) 位階の上昇においては,飛び越えは許されない。顕職の任命は元老院の助言を得て2ケ月以内に王が行う。5) クラクフ王領地はクラクフ城代または知事のみが領有できる。6) 代官は王と国家に誓約を行う。7) 国宝の鍵は4人のセナトルが管理する。8) 臣民は自由に王に対する訴訟を起こすことができる。9) 王は貨幣の鋳造で臣民に害を与えてはならない。10) 代官はその職務の遂行にあたって,その地の司教や知事や城代の意見を考慮すること。11) 王領地と私領地の境界に関する訴訟ではそのための委員会が設置されるべきこと。