表題番号:1995A-031 日付:2002/02/25
研究課題ジョルジュ・バタイユ研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 吉田 裕
研究成果概要
ジョルジュ・バタイユに関する研究を,しばらく前から続けているが,1995年度は,バタイユの最初期に関する検討を行った。1897年生まれのバタイユがものを書き始めるのは,1920年代の後半,シュルレアリスムおよびアンドレ・ブルトンとの関わりと抗争においてである。
この関係の中には,単に文学と学術におさまらないさまざまの要素が絡んでくる。精神分析学の理解のしかた,トロツキーの追放に象徴される左翼運動の混迷などである。バタイユは,ブルトンとの論争に全精力を集中する。シュルレアリスムについてバタイユはのちに,自分は内部の的だったと言っている。つまり理性あるいは必然性を越えた不可思議で偶然のものへの関心は同じくするが,それでも決定的に異なるところがあるというのだ。この違いがはっきりと見えてくるのは,1929年のブルトンからのアンケートに対するバタイユの回答「イデアリストの糞ったれどもにはうんざりだ」であろう。ここでバタイユの反イデアリスムすなわちマテリアリスムが明瞭になる。この前後の論文(未発表のものが多くある)をたどっていくと,彼が精神分析学や社会学を援用しながら,また当時のマルクス主義を批判しながら,物質性を問い,明らかにしようとしていることが見えてくる。物質性へのこの関心は,これを以降姿を変えながらも,バタイユの行程を最下部から支配することになる。
バタイユのこの最初の立脚点を確かめえたことが,1995年度の成果である。