表題番号:1995A-025
日付:2002/02/25
研究課題ドイツ原子力改正の動向と我が国への影響-行政法学の観点からの検討-
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 法学部 | 教授 | 首藤 重幸 |
- 研究成果概要
- 1994年,ドイツ原子力法は7回目の法改正を行い,それまで使用済み核燃料の再処理を義務付けていたものを,再処理と直接処分の二つの可能性を同等のものとして認めた。実際に改正された事項はわずかであったが,法改正の検討課題としては,かなり広く根本的な諸問題が議論された。今回の研究は,この改正の課題として検討された事項をすべて紹介し,その問題点を析出しようとするものである。
今回の研究の第一段階として,まず,原子力発電所の許可について決定的な役割を果たす安全審査基準の法的性格と,その安全審査基準を策定する政府と州の委員会の構成と役割を検討した。
ドイツでの今回の原子力法改正の課題の一つに,原子力行政における助言(諸問)委員会の法定化というものがあった。すなわち,このような委員会の運営や委員構成の仕方,さらには答申の扱いや拘束力などを法律で決めるべきとするものである。この議論の基礎には,もちろん安全審査基準(ほとんどは行政規則としての性格)の重要性と,その基準を実質的に作成している委員会の重要性についての統一理解がある。
次いで,ドイツの原子力発電所に関するウィール判決は,本来は裁判所や国民を拘束する力のない非法規たる行政規則(安全審査基準)に,結果的に法的拘束力を認める判決をしたが,この意味での行政規則の法規化現象をめぐるドイツ行政法学の議論を検討した。
この行政規則の法規化現象を正当化する根拠を与えるものが,(1)当該行政規則の作成過程への議会の関与,国民参加,反対意見の反映,公正な委員会の委員構成という点と,(2)憲法は高度の専門科学技術知識を必要とする基準作成権限を行政に配分しており,裁判所はその基準を審査する権限を原則として有していない,という議論である。最後に,これらの議論を批判的に考察した。