表題番号:1995A-013 日付:2002/02/25
研究課題民法学史の研究序説
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 内田 勝一
研究成果概要
本研究は我国民法学の歴史的研究を目的とするものであるが,今年度は現行民法典の所有権規定の制定過程から戦前までの理論史を研究した。
その結果,(1)民法典の制定過程においては,天賦人権説的な自然権としての所有権,絶対的な権利としての所有権という考え方と法令の制限の範囲内で認められ,国家によってその権利内容が制約されるのは当然であるという考え方が対立していた。(2)この対立関係は明治憲法における財産権保障のあり方と密接に関連していたこと。(3)しかし,その後は,制定過程におけるこのような緊張関係が民法学の中では必ずしも十分には理解されず,条文の極めて形式的な解釈が行われるに止まっていったこと。(4)戦時体制では共同体的な所有権理論が主張され,一定の支持を得ていたこと。などを明らかにした。
民法学史研究会の研究成果の一部は獨協法学に掲載されたが,研究成果の全体は信山社から二巻本として刊行されることになっており,本研究者の研究成果はそれに含まれることになっている。