表題番号:1995A-012 日付:2002/02/25
研究課題研究開発組織と人的資源
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 助教授 村上 由紀子
研究成果概要
日本本企業の現行の人事システムや作業システムは,既存技術の改良による品質の向上やコストダウンという戦略には強味を発揮するが,独創的な基礎研究には適さないと指摘されている。そこで,平成4年1月の科学技術会議第18号答申で示されているように,基盤研究をはじめとする研究活動を活発化するため,研究者が創造性を最大限に発揮できるような柔軟で競争的な研究環境の整備が求められている。
本研究では,研究活動を活性化するような研究環境とは何かについて,主に作業組織と研究者の人事管理の面から調査を行った。その方法は,文献購読と現在大企業でR&Dに従事している研究者との面接調査である。
また,筆者は慶應義塾大学R&D研究会に所属しそこで行われた企業の研究者に対する質問紙調査や研究会での討論からも多くの情報や示唆を得ることができた。
その結果,企業の研究者からみた基礎研究を活性化する研究環境とは,「会社トップやチームリーダーが明確な目標を立て,強力なリーダーシップの下でその目標を維持する」「研究者がデーマや研究方法の選択,時間の使い方等において自由度を持つ」「年功にこだわらず徹底的に議論ができるようなオープンな組織風土があり,また社内で情報交換が活発に行われる」「研究者が研究に専念できるようにサポートスタッフが充実している」「社外との活発な研究交流が行われる」「他者から研究者を採用したり雇用形態を多様化する」等であった。
これらの環境は,従来型の生産部門や開発部門の効率を重視した人的資源管理や作業組織とは異なる特徴を持っている。研究部門独自のそれらを確立すべきか,あるいは,確立することができるかは,企業の今後の製品戦略やR&D戦略,産業組織の動向とも深く関わっていると考えられ,今後この点に関して一層の考察を要する。