表題番号:1995A-010 日付:2002/02/25
研究課題マックス・ヴェーバーにおける政治的なもののエレメント
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 助教授 仲内 英三
研究成果概要
本年度は「マックス・ヴェーバーにおける政治的なもののエレメント」と題して,主としてヴェーバーの政治論文における言明を出発点に,西欧世界における政治的なものの基底に存在すると考えられる特徴を摘出することに努力した。但し,ここで言う政治的なものの「エレメント」とは,論理的な意味での概念,あるいは形而上的意味での根本理念などと理解されてはならない。むしろそれは,西欧近代政治史(とくに英国とドイツの近代政治史)における政治的なものの現実に付随して現れたと考えられる諸力のことである。筆者はこのような意味での政治的なもののエレメントを,いわば便宜的に物質的基盤と精神的基盤に分類し,前者を「品位を伴った閑暇」(otium cum dignitate),後者を「精神の刻印力」(Einpragskrafte des Geistes; admirabilisdignitas) と命名した。いずれもマルクス・トゥッリウス・キケロの著作,すなわち前者は『セスティウス弁護論』,後者は『ムレナ弁護論』から借用し,日本語で表現した用語である。このように命名されたマックス・ヴェーバーにおける政治的なもののエレメントのうち,「品位を伴った閑暇」については,「マックス・ヴェーバーにおける政治的なもののエレメント-その物質的基盤・品位を伴った閑暇-」と題する論文(『早稲田政治経済学雑誌』1996年1月発行)のなかで詳しく検討した。また「精神の刻印力」については,合計三本の論文で検討する予定にしているが,そのうち第一号論文に当たる「マックス・ヴェーバーにおける精神の刻印カーマックス・ヴェーバーにおける政治的なもののエレメント・その精神的基盤-」(『早稲田政治経済学雑誌』1996年4月発行)はすでに公表されている。さらに第二号論文に当たる「精神の刻印力と政治的民主化-マックス・ヴェーバーにおける政治的なもののエレメント・その精神的基盤と民主主義-」も,まもなく1996年7月1日発行予定である。