表題番号:1995A-009 日付:2002/02/25
研究課題経済構造の変化の統計的検出に関する研究(モデルの想定過誤との関連について)
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 助教授 西郷 浩
研究成果概要
経済構造の変化の有無を検定することは,経済モデルを構築する上で重要な意味を持つ。なぜなら,構造的な変化があったにもかかわらずこれを無視して予測をおこなえば,予測の精度が落ちることは避けられない。
このため,計量経済学においては,経済構造の変化の検出方法を構築するのが重要なトピックのひとつとなっている。今日の非定常時系列分析においても,単位根の検定に構造変化が大きな影響をおよぼすことから,単位根検定と構造変化の検定とをいかにして組み合わせるかが最近の課題となっている。
従来の構造変化の検出の方法は,「構造変化が生じているという点を除けば,モデルの特定化に誤りがない」ことが前提条件である。ところが,経済分析においては,特定化された分析モデル自体が経験的に組み立てられることが大半であるから,特定化が正しいという前提も検定の対象とされるべきである。にもかかわらず,これまでの構造変化の検定では,モデルの特定化に配慮していたとはいいがたい。
この研究では,構造変化とモデルの特定化と同時に検定することによって,構造変化だけを検出する有効な方法を検討した。まず,構造変化の検出のために考案されている手法と関数形の特定化の検定に考案されている方法を理論的に整理した。双方とも関連文献は膨大であり,理論的な比較対比は容易ではない。今年はこの理論的な整理にとどまり,同時検定の手法については試論の域を出ていない。元来Non-nestedな関数形の検定をNestedな形式に変換して構造変化の検定に盛り込むことが基本的なアイディアである。具体的には,ダミー変数とRESET検定とを組み合わせて同時に使い,前者によって構造変化を,後者によって関数形の検定をおこなおうとするものである。有意水準や検出力を検討するためのシミュレーション・プログラムを試作した。理論的な検討は今年度の課題としたい。