表題番号:1995A-007 日付:2002/02/25
研究課題バブル経済の影響と金融システム-理論と実証
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 藪下 史郎
研究成果概要
日本経済は,1991年から現在に続く深刻な不況を経験してきたが,それはバブル経済の崩壊による金融機関の破たんと金融システムの不安定化によって特徴づけられる。こうした景気変動の過程での銀行行動また信用量の変動はマクロ経済にどのような影響を及ぼすのであろうか。逆に金融システムの不安定化は,なぜ生じたのであろうか。こうした銀行および金融システムとマクロ経済変動との関係を,情報の経済学の観点から分析しようとするのが,本研究の目的であった。
これらの問題について,いくつかの研究会で発表し多くの専門家から貴重な意見を聞くとともに,自己の考えをまとめ,次の二つの研究成果を得た。
(1)「金融システムと情報の理論」東京大学出版会,1995年10月,280頁
本書では,最近の「情報の経済学」に基づき,金融の問題を広く検討し,不完全情報下での金融市場の非効率性や金融システムの不安定性を明らかにした。さらに,そうした金融経済の脆弱性がマクロ経済全体の変動を不安定にする可能性があることをも指摘した。より具体的な内容は次のとおりである。
序章 貨幣と金融
1章 金融取引と情報
2章 直接金融と非対称的情報
3章 不完全情報と金融仲介機関
4章 不完全情報と利子率の硬直性・信用割当て
5章 メインバンクと情報
6章 中小企業金融とメインバンク競争
7章 継続的取引とメインバンク競争
8章 銀行経営,リスク,および取り付け
9章 銀行と金融システムの不安定性
10章 銀行制度と金融恐慌:歴史的分析
終章 金融システムとマクロ経済変動
(2)「銀行の自己資本・貸付とマクロ経済変動」早稲田政治経済学雑誌,第325号,1996年1月,177-219頁 本論文では,銀行貸付の変動およびマクロ経済変動の不安定性を分析した。