表題番号:1994B-025 日付:2004/11/19
研究課題有尾両生類の性フェロモンに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 菊山 栄
(連携研究者) 教育学部 教授 石居 進
(連携研究者) 人間科学部 教授 小室 輝昌
研究成果概要
性的に成熟した雄のアカハライモリを飼育している水に,性的に成熟した雌イモリに限ってひきつけられることがわかった。腹部肛門腺を切除された雄イモリの飼育水には雌誘引活性がみられない。そこで,活性物質は肛門腺でつくられるか,そこを経由して水中に放出されると考え,肛門腺より活性物質の単離を試みた。活性物質は,ゲル濾過カラムクロマトグラフィーやプロナーゼ消化などの結果から,分子量の比較的小さいペプチドであることが,予想され,最終的には逆相カラムクロマトグラフィーによって単離することができた。アミノ酸組成や配列の解析,分子量の測定などから,NおよびC末端ともに修飾されていない,アミノ酸10残基よりなるペプチドであることが判明した。これまでに知られているどのペプチドにも該当しないことから,これをソデフリンと命名した。ソデフリンは両生類で同定されたはじめてのフェロモンであり,脊髄動物ではじめてのペプチドフェロモンである。化学合成したソデフリンは生体より得られたものと同様の活性を有すること,ソデフリン抗体を用いてソデフリンの存在部位をしらべたところ肛門腺上皮細胞中の分泌果粒中に局在していること,などもわかった。雌イモリの鼻と脳との間の連絡を外科的に断ったりするとソデフリンの効果がみられない。従ってソデフリンは鼻器官を介して作用するものと考えられた。更にソデフリンを他種のイモリ(シリケンイモリ)に作用させても無効であり,シリケンイモリの肛門腺水抽出物はシリケンイモリ雌のみをひきつけ,アカハライモリ雌をひきつけない。このことからソデフリンは種特異性を有し,おそらく同属・異種のシリケンイモリにはソデフリンとは異なる雌誘引物質がその肛門腺に存在していることが示唆された。