表題番号:1994B-020 日付:2002/02/25
研究課題日本社会における農村地域の役割と発展方向に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 堀口 健治
(連携研究者) 政治経済学部 教授 筑波 常治
(連携研究者) 法学部 教授 楜澤 能生
(連携研究者) 教育学部 教授 中島 峰広
(連携研究者) 教育学部 教授 朝倉 征夫
(連携研究者) 商学部 教授 大塚 勝夫
(連携研究者) 社会科学部 助教授 弦間 正彦
(連携研究者) 人間科学部 教授 柿崎 京一
(連携研究者) 人間科学部 助教授 店田 廣文
研究成果概要
農村,農業,農民,地域に視点をおき,実態調査も分担・参加できる早大内の教員で組織された本グループ(事情で参加できなかった教員も複数いたが)は,水稲と果樹・有機農業の実践グループが多く活躍する山形県高畠町,共有・共同利用の温泉と山林の活用で地元開発型の成功例としての長野県野沢温泉村,同じく入会林を畜産用に高度に利用する若き担い手たちで組織された農業生産法人がサービス施設も経営する大分県玖珠町の3か所を,共同調査した。
農業経済学,技術論,法社会学,地理学,社会教育,開発経済論,農村社会学等,多様な分析視角から,共同で農村調査を実施するのは,問題点や展望を明らかにするうえで有効だった。共同調査地以外にも,参加者が単独ないし複数で実施した調査もあり,共同調査地とは異なるタイプの農村も対象にした。
また学外者から農村の開発のあり方や実例も聴取し,議論して内容を深めた。
開発の視点で農村地域をみると,外部資本による転用も含めた開発型に対して,地元民が共有・共同利用のストックを持つ地域はその使い方が共有者の理解をえられるならば,就業機会の安定的確保,投資効果が地元に所得増やインフラ整備の源資として残るなど,メリットを地元に定着させる開発型としてとらえることができる。スキーリフトを経営しかなりの剰余金を町財政に入れることのできる野沢温泉村は,共有財産の存在とそれを支持する住民があればこその成功例である。高畠町も,共有財産ではないが,有機農業の運動が多数の農民の支持をえられて始めて,農産物の差別化の効果が大きくあらわれている。多くの入会牧野が遊休地化する大分・熊本にあって,玖珠町は特定法人に共有財産の利用を任せた形式が活きている。都市と異なる機能をもつ農村の発展方向を示唆する開発事例である。