表題番号:1994B-016 日付:2002/02/25
研究課題エジプト・マルカタ遺跡出土の彩画片の保存と復元
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 吉村 作治
(連携研究者) 第一・第二文学部 教授 高橋 榮一
(連携研究者) 理工学部 助教授 西本 真一
研究成果概要
「魚の丘」遺跡出土の彩画片は泥質の壁に顔料を用いて描いたものであり,その保存および復元にあたっては,当時どのように壁画が描かれたかを技術的に把握することが不可欠である。そこで,同時代のルクソール西岸の岩窟墓の壁画やマルカタ王宮出土の彩画片の技術観察を行った。また技術の解明に向けて顔料の成分分析や実体鏡観察などを行う研究に着手した。古代エジプトの壁画を描く技術には未だ解明されていない点が多く残されており,「魚の丘」の資料において観察される技術を研究し報告していくことは意義深いものである。
また,彩画片をより良い状態に保つために収納状況の整備と保存処理も継続して行っている。
彩画片の資料化にあたってはパーソナル・コンピューターを使用し,画像を取り込んだデータベースの作成を進めている。基礎データの入力は既に終了していたが,実際の復元考察作業に用いる検索機能を充実させるためにデータの整備を行った。
壁画の復元研究では,個別モチーフと壁画構成を復元する際に必要な類例資料の収集に努めた。「魚の丘」の建物址は新王国第18王朝時代のアメンヘテプ3世が造営したものであり,壁画の主題や表現技術は当時の時代的背景に位置づけて考えることが肝要であることから,ルクソール西岸に位置する第18王朝時代の岩窟墓の壁画資料を重点的に収集した。
また,1995年度には,「魚の丘」建物址の壁面復元研究の途中経過を報告し,保存や修復に関する意見を交換する場として図像学研究会を発足させた。1995年度は4回に渡り彩画片を用いた復元研究の現状を報告する会を開催した。