表題番号:1994B-009 日付:2002/02/25
研究課題2値画像の情報非保存型高能率符号化方式に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 安田 靖彦
(連携研究者) 理工学部 教授 小松 尚久
研究成果概要
最近携帯電話を始めとする移動体通信の普及が急速に進みつつある。移動体通信はその性質上無線電波を用いるが,その周波数は有限の貴重な資源である。従って,移動体通信の1チャンネル当たりの情報伝送速度は対応する有線通信に比べ一般に小さい。デジタル携帯電話を例に取ると,約8kb/sまたは4kb/sであって,アナログ電話網で一般的な14.4kb/sあるいは9.6kb/sに比べて低い。このような低速の回線で通常のファクシミリ伝送を行うと伝送時間が長くなる。
本研究ではこの様な背景の下に,書画のような2値画像のより高能率なデータ圧縮方式に関する基礎的な研究を行った。
実用化されている2値画像のデータ圧縮方式は情報保存型符号化と称し,圧縮伸張処理した後,完全に原情報に復元できることを前提にした符号化処理を用いている。この前提に立つ限り,現状より大幅なデータ圧縮は望み得ない。そこで,本研究では,復元情報が原情報と厳密に一致することを前提としない情報非保存型符号化方式を採り上げて検討した。すなわち,大きさによって対象とする文字を2つのカテゴリーに分類し,小さな文字は判読性に重点をおき,細線化処理によって線幅情報はカットし,そのスケルトンのみを抽出して符号化する。一方,大きな文字は自然性が重要との立場から,その輪郭線情報を抽出して符号化する。この際,輪郭線上の特徴点の候補をその点における曲率をもとに選定すると共に,特徴点によって分割された各区間を直線近似や曲線近似等によって表し符号化する。
提案する情報非保存型符号化方式をファクシミリ用テスト原画に適用した結果を現用の国際標準符号化方式であるMMR方式によるデータと比較した結果,提案方式は平均して後者の半分以下の符号量で表現することが明らかとなった。