表題番号:1994B-004 日付:2002/02/25
研究課題硫黄酸化細菌を利用した二酸化炭素固定バイオリアクターの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 宇佐美 昭次
(連携研究者) 理工学部 教授 平沢 泉
(連携研究者) 理工学部 助教授 桐村 光太郎
研究成果概要
自然界には,少数ではあるが二酸化炭素固定能力を有する微生物も存在する。硫黄酸化細菌や鉄酸化細菌もこの能力を示し,さらに重金属イオン耐性,pH1付近の酸性条件下における生育など特異的生育能力を示す。本研究は,硫黄酸化細菌を利用した新規な二酸化炭素固定バイオリアクターを開発することを目的とした。
供試菌の通常の培養には元素硫黄がエネルギー源として使用されるが,代替エネルギー源としてチオ硫酸ナトリウムの使用が可能であることを見出した。制御条件を検討し最適化した場合,pH5.0に調節した場合に20mMチオ硫酸ナトリウムを添加し,水酸化カリウムを適宜添加するのが良好な生育量を確保するための基礎的因子であることが判明した。さらに二酸化炭素の溶存濃度を検討し,0.5~0.7%(v/v)として通気することが効率的な二酸化炭素固定の条件であることを発見した。これらの最適制御条件下で供試菌を培養した場合には細胞濃度が4.5×1010 cells/mlに達した。これは従来の約4倍の細胞濃度で,培養期間も14日間から7日間に短縮されたことから,実効率として約8倍になった。細胞量は固定した二酸化炭素量に比例するが,実際の二酸化炭素固定量(通気量からの減少量)を測定した場合にも一致した結果が得られた。以上の検討により,工場等の煤煙処理水からの硫黄化合物と二酸化炭素の同時除去が期待されたため,数種の処理水を用いた検討を行い結果を比較した。有機化合物を含まない完全燃焼後の処理水では良好な結果が得られたが,有機化合物が2mg/l以上含まれる場合には二酸化炭素固定が充分には進行しなかった。したがって,完全燃焼後煤煙溶液の後処理に実効のあるシステムが開発されたことになる。
本研究を通じて,二酸化炭素と硫黄含有化合物の除去システム構築に成功した。