快適な駅空間の温熱環境に関する研究

2012-1001-07
研究者名
研究者情報 田邉 新一 教授
所属
理工学術院 創造理工学部
専門分野
建築環境・設備
キーワード
エネルギー節約・効率利用 、 環境マネジメント 、 環境計測 、 環境経済 、 半屋外空間の温熱環境

背景

従来の駅空間は通貨空間としてみなされていたが、ここ数年の間に、首都圏の拠点駅にはショップやカフェなどを備えたものが登場し、「滞在」という新しい駅利用のかたちが生まれつつある。それゆえ駅の環境や快適性はより重要視されてきているが、半屋外という性質を持つ駅では、規模に関わらず、全ての駅において空調一辺倒ではなく比較的小規模な駅においてはパッシブ手法を用いることで、環境負荷を高めることなく計画することが可能ではないかと考える。また、空調が導入される大規模なターミナル駅においては半屋外空間である駅に対して如何に外気の影響を受けさせずに省エネルギー性と快適性を向上させるかが重要となっている。

シーズ概要

2004~2006年に行われた実測調査では、都内に位置する非空調の4駅において環境測定と約4000人に対してアンケート調査を行合った。その結果、夏季において滞在者の20%以上が受容できないと申告した受容限界はSET*(標準有効温度)32℃であり、多くの時間帯で限界値を超えていることが明らかになった。この限界値は室内の受容上限よりも高い。また、暑い駅の主な要因として、気流が微弱であること、 日射の影響が大きいことがあげられており、 これらの要因に対して対策案の検討を進めている。2011年度の研究では、改札内に大規模な商業施設及び空調が導入された駅において、実測調査が行われた。その結果、夏季における受容及び快適の上限は非空調駅と同等であったが、快適の下限は空調が導入された駅の方が高いことが示された。また、外気の流入が構内の温熱環境制御を阻害する可能性が示唆され、要因の詳細な分析と対策案を検討している。

応用・展開

駅には様々な用途や形態が存在する。例えば大規模なターミナル駅、地域の顔となっている駅等である。様々な形態が存在する駅において、環境工学としての評価も取り入れることで、駅としての価値を向上させるような設計ツールを作成できる可能性が有ると考えられる。

優位性

駅はその輸送効率の良さ、つまり単位人数あたりのCO2排出量が他の輸送機関より少ないことから、駅空間の価値を向上させ利用者を増やすことが結果的にCO2排出量を減らすことが可能になると考えられる。また、駅が元来地域の拠点として存在していた背景があり、街の発展も駅を中心に栄えたことから、駅の活性化が地域の活性化につながる可能性が有ると考えられる。

資料

  • 非空調駅における不快・非許容申告者率の回帰曲線
  • 構内空気温度平面分布
  • 構内熱画像
  • シミュレーションモデルの概念図

関連論文

  • 中野淳太ら : 駅空間における熱的快適性実測調査(その1~28)日本建築学会大会学術講演梗概集D-2分冊
  • 中野淳太ら : 大規模空調空間を有する駅の温熱環境とエネルギーに関する研究(その1~4)日本建築学会大会学術講演梗概集

他のシーズ

  • スポット空調・パーソナル空調による熱的快適性実現
  • エネルギー予測と環境対策シナリオ作成
  • オフィスの生産性・経済性と省エネルギーの両立シナリオ
  • ZEB化省エネビルにおける快適性・知的生産性評価
  • 自動車室内の快適な温熱環境に関する研究
  • 室内空間におけるSVOC(準揮発性有機化合物)に関する研究
掲載日: 2012/10/01